昔から「雛人形の片付けが遅れると婚期が遅れる」と言われていますが、本当にそうなのでしょうか?雛人形を長く飾っていた人は結婚が遅れ、すぐに片付けた人は早く結婚できたのでしょうか?
そもそも、なぜそのように言われるようになったのか、また、雛人形を片付けるのに最適な日はいつなのかについて解説します。
雛人形を早く片付けるべき理由
雛人形を早く片付けるべきだと言われる理由には、いくつかの説があります。
厄が戻ってくるという説
平安時代、貴族の子どもたちの間で「ひいな遊び」と呼ばれるおままごとのような遊びが流行していました。「ひいな」には「小さくてかわいらしいもの」という意味があり、この遊びで使われる人形は、人の代わりに厄を受けてくれるものと考えられていました。
そこから、厄払いのために川や海に流す「流し雛」の風習が生まれ、これが雛人形の起源とされています。
江戸時代になると、雛人形は女の子の健やかな成長を願う節句の行事として定着しましたが、人形が厄を引き受けるという考えはそのまま残りました。
そのため、ひな祭りが終わった後も雛人形を飾り続けると、せっかく人形が引き受けた厄が女の子に戻ってしまうと考えられ、早めに片付けるべきだと言われるようになったのです。
花嫁修業の一環とする説
雛人形は飾るのも片付けるのも手間がかかります。特に五段飾りや七段飾りの場合、人形や道具の数が多く、それぞれを丁寧に包んで収納する作業が必要です。
この作業を通じて、「片付けがきちんとできないと、良い奥さんになれない」という考え方が生まれました。早めに片付けることで、整理整頓ができるしっかりした女性になるという教えが込められていたのです。
片付けが遅れると婚期が遅れる理由
雛人形はお内裏様とお雛様の結婚式を表現していることから、「女の子の結婚」と結び付けられました。昔は結婚が女性の幸せと考えられていたため、早く雛人形を出すことで「早く嫁に出す」、早く片付けることで「早く嫁に行く」と連想されたのです。
この迷信には科学的な根拠はなく、単に早めに片付けさせるための言い伝えだったとも考えられます。実際、雛人形を長く飾っていた人でも早く結婚することはありますし、すぐに片付けたからといって晩婚になるわけではありません。
雛人形を片付けるのに良い日
雛人形を片付けるのに適した日は、以下のような日が挙げられます。
啓蟄(けいちつ)の日
「啓蟄」は二十四節気のひとつで、冬ごもりしていた虫が春の訪れを感じて地上に出てくる時期を指します。
この時期は気候が安定し、湿気が少ないため、雛人形を収納するのに最適とされています。
天気の良い日
啓蟄の日にこだわらなくても、雛人形を片付ける際に最も重要なのは「天気」です。湿気の多い日に収納すると、カビや虫が発生する原因となるため、ひな祭りが終わったら晴れた日を選んで片付けるようにしましょう。
一般的には、3月中旬までには片付けるのが良いとされています。
月遅れのひな祭りを行う地域
一部の地域では、旧暦の影響を受けて「月遅れのひな祭り」として4月3日にお祝いすることがあります。
例えば、山形県、長野県、静岡県、京都府、鹿児島県の一部地域では、新暦の3月3日ではなく、1か月遅れの4月3日にひな祭りを行う風習が残っています。
そのため、これらの地域では雛人形を3月3日ごろに出し、4月3日ごろに片付けることが多いようです。
まとめ
雛人形の片付けが遅れると婚期が遅れるというのは、あくまで昔の言い伝えであり、科学的な根拠はありません。しかし、「厄を持ち帰らないため」「整理整頓を学ぶため」といった理由で、ひな祭りが終わったら早めに片付ける習慣が広まりました。
2025年の雛人形を片付けるのに適した日は、3月5日の啓蟄や、湿気の少ない晴れた日が良いとされています。地域によっては4月3日まで飾る風習もあるため、それぞれの習慣に合わせて片付けると良いでしょう。
片付ける際には、親子で一緒に作業しながら「昔はこんな迷信があったんだよ」と伝えるのも、良い思い出になるかもしれませんね。