平安時代、今からおよそ千年前の日本。この時代、貴族やその子供たちはどのような遊びを楽しんでいたのでしょうか？この記事では、平安時代の代表的な娯楽をわかりやすく解説します。
現代でも親しまれる遊びのルーツを探る旅、ぜひ最後までお付き合いください。
蹴鞠（けまり）
平安時代を代表する娯楽といえば「蹴鞠（けまり）」です。8人ほどが輪になり、革製の鞠を地面に落とさないように蹴り続ける遊びで、ラリーの回数を競いました。枕草子（二〇三段）でも清少納言が次のように述べています。
“遊びわざは、小弓。碁。さまあしけれど、鞠もをかし”
清少納言は「格好悪いが、鞠も面白い」とし、その魅力を認めています。また、蹴鞠は平安時代にとどまらず、飛鳥時代や戦国時代にも親しまれていました。
物合（ものあわせ）
「物合」は、2つのチームに分かれ、お題に沿ったものを出し合い優劣を競う遊びです。さまざまな種類がありましたが、以下は特に有名なものです。
- 歌合（うたあわせ）: 和歌の優劣を競う。
- 薫物合（たきものあわせ）: お香の調合や香りを競う。
- 鶏合（にわとりあわせ）: 雄鶏を闘わせる。
- 貝合（かいあわせ）: 二枚貝の貝殻を合わせ、その美しさを競う。
枕草子（二六一段）では、清少納言がこう述べています。
“物合、なにくれといどむことに勝ちたる、いかでかはうれしからざらむ”
勝利の喜びを実感する清少納言の言葉から、物合が競技としての魅力を持っていたことがわかります。
囲碁（いご）
囲碁は現代とほぼ同じ形で平安時代の貴族に親しまれていました。枕草子には囲碁に関する記述が多く、たとえば二〇段では次のように触れられています。
“清涼殿の丑寅の隅の”
囲碁は知的な遊びとして貴族たちの間で広まり、社交的な娯楽としても愛されていたのです。
双六（すごろく）
現代の双六と同様、サイコロを振って駒を進めるゲームですが、平安時代の双六はより複雑なルールを持っていました。枕草子（一三四段）では次のような描写があります。
“馬下りぬ双六”
サイコロの目が進まず、退屈する状況を語る清少納言の記述から、当時の双六も現代と同様に一喜一憂させる遊びだったことがうかがえます。
雛遊び（ひいなあそび）
「雛遊び」は紙で作った人形を使い着せ替えを楽しむ遊びで、現代のお人形遊びに似ています。枕草子（二七段）には次のように記されています。
“雛遊びの調度”
清少納言は、幼少期に雛遊びを楽しんでおり、道具を見て懐かしく思い出していたようです。この遊びが現代の「ひな祭り」の原型であると考えられており、長い伝統の一端を担っています。
編つぎ（へんつぎ）
漢字の「旁（つくり）」と「編（へん）」を合わせて新しい漢字を作る遊びで、知識と発想力が試されました。特に女性の間で人気があり、教育的な要素も含まれていました。
謎謎合（なぞなぞあわせ）
現在のなぞなぞに似ていますが、より知的で高度な内容を競う遊びでした。2つのチームが交互に謎を出し合い、正解数を競う形式です。枕草子の一三八段では、この遊びの様子が語られています。
平安貴族たちの娯楽まとめ
以上、平安時代の貴族や子供たちが楽しんだ遊びを解説しました。現代にも通じるものから、当時ならではの風雅な遊びまで、多様な娯楽が存在していました。
娯楽の選択肢が限られていた分、知識や創意工夫を活かした遊びが多かったのが特徴です。
これらを知ることで、千年前の人々の暮らしや感性をより身近に感じられるのではないでしょうか。
平安時代の遊びを通じて、日本の文化や歴史への理解を深めていただければ幸いです。
