お彼岸になると「おはぎ」を食べる風習を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。しかし、なぜお彼岸に「おはぎ」を食べるようになったのか、その由来についてご存じですか?
もちろん「お供え物としてご先祖様に捧げるため」という理由が一般的に知られていますが、それだけではありません。今回は、おはぎをお彼岸に食べる理由や、その背景にある意味について掘り下げてみましょう。
また、「おはぎ」と「ぼたもち」の違いや、粒あんとこしあんの違いにも触れていきます。お彼岸の時期におはぎを楽しむ際に、その由来を知ることで一層美味しく感じることができるかもしれません。
お彼岸におはぎを食べる理由
まず、なぜお彼岸におはぎを食べるのか。その一つの理由として、昔から「邪気を払うため」という言い伝えがありました。
お彼岸の時期は、あの世(彼岸)とこの世(此岸)が最も近くなると考えられており、そのために邪気を払い、身を清めるために食べられていたのです。
おはぎに使われる「小豆」の赤い色には、古来より邪気を払う効果があるとされていました。これが、お彼岸におはぎを食べる習慣の根底にある理由の一つです。
また、地域によっては「おはぎ」ではなく「赤飯」をお供えするところもあり、いずれも小豆の持つ邪気払いの効果に由来しています。
もう一つの理由は、ご先祖様への感謝の気持ちを込めた「お供え物」としての意味です。昔、小豆や砂糖は高価で貴重な食材であり、普段は手に入らない特別なごちそうでした。
そのような贅沢品をお供えすることで、ご先祖様に感謝し、これからも家族を見守っていただきたいという祈りを込めたのです。おはぎを作り、お供えした後に家族で一緒に食べることで、ご先祖様との繋がりを感じ、家族の絆を深める意味もあったのかもしれません。
「おはぎ」と「ぼたもち」の違いとは?
さて、「おはぎ」と似た食べ物に「ぼたもち」がありますが、この二つの違いは一体何でしょうか?実は、どちらも基本的には同じ食べ物で、違いは「食べる時期」によるものです。
春のお彼岸に食べるものが「ぼたもち」、秋のお彼岸に食べるものが「おはぎ」と呼ばれます。これらの名前は、季節の植物に由来しており、春には「ぼたん(牡丹)」、秋には「はぎ(萩)」の花にちなんで名付けられました。
- ぼたもち(牡丹餅): 牡丹の咲く季節である春のお彼岸に食べるものが「ぼたもち」です。牡丹の大きな花にちなんで、ぼたもちもやや大きめに作られることがあります。
- おはぎ(お萩): 一方で、秋に咲く萩の花にちなんで、お彼岸に食べられるものが「おはぎ」です。萩の花は小さく、控えめな花ですので、おはぎも比較的小ぶりに作られることがあります。
現在では、季節を問わず「おはぎ」という名称で呼ばれることが多くなりましたが、もともとはこのように季節ごとの植物の名前が用いられていました。
地域によっては、現在でも春と秋で呼び方を使い分けているところもあるため、日本の四季や伝統文化が色濃く反映された風習と言えるでしょう。
粒あんとこしあんの違い
さらに、おはぎには「粒あん」と「こしあん」の違いもあります。好みによって選ぶ方も多いと思いますが、実はこれも季節に由来しているのです。
- おはぎには粒あん: 秋に収穫される新鮮な小豆は皮ごと柔らかく、粒のまま使うことができるため、秋のお彼岸には「粒あん」が使われます。新鮮な小豆の風味をそのまま味わえる点が特徴です。また、萩の花の小さな粒々を模しているとも言われます。
- ぼたもちにはこしあん: 春のお彼岸の頃には、前の秋に収穫された小豆が少しかたくなってしまっているため、皮を取り除いて滑らかな「こしあん」にして食べます。これは牡丹の花のつるっとした美しい姿を模したものだともされています。
また、粒あんは小ぶりな萩の花に似せて作られ、こしあんは大ぶりな牡丹の花を意識して大きめに作られることもあるため、見た目にも季節感が表れているのが面白いところです。
まとめ
お彼岸におはぎを食べる理由には、邪気を払うためやご先祖様への感謝の気持ちを表すためなど、古くからの日本の風習や信仰が深く関わっています。
また、春には「ぼたもち」、秋には「おはぎ」として食べる季節ごとの名前の使い分けや、あんこの種類にも季節の特徴が反映されていることがわかります。
現代では、季節を問わず「おはぎ」として親しまれていますが、日本の四季や伝統文化を感じながら食べることで、より一層味わい深く感じられるでしょう。
今年のお彼岸には、ぜひその由来を感じつつ、おはぎやぼたもちを楽しんでみてはいかがでしょうか。