『姑息(こそく)』の正しい意味と使い方!多くの人が誤解している理由も解説

常識

「姑息(こそく)」という言葉を聞くと、なんだか「ずるい」「卑怯な」というネガティブなイメージを抱く人が多いかもしれません。

たとえば「姑息な手段を使う」と言われると、ずるいことをしたように思えてしまいます。しかし、実は「姑息」という言葉には本来、「卑怯」や「ずるい」という意味は含まれていないのです。

ここでは、「姑息」の本来の意味や正しい使い方について詳しく解説していきます。

「姑息」の正しい意味は?

「姑息」の意味は、漢字を分解してみるとわかりやすくなります。「姑」には「しばらくの間」という意味があり、「息」は「息をつくこと」を表しています。つまり、「しばらくの間だけ息をつく」「一時的にその場をしのぐ」という意味になります。

「姑息」は「その場しのぎ」や「一時的な処置」を表す言葉であり、決して「卑怯」や「ずるい」といった意味ではありません。

「姑息」を使った四字熟語:因循姑息

「姑息」を含む有名な四字熟語に「因循姑息(いんじゅんこそく)」という表現があります。これは「古い習慣ややり方にとらわれて、その場しのぎの対策で問題を乗り切ろうとする」という意味です。

たとえば、今の時代に合わないやり方を改めず、現状維持のままでいることを指します。

私が以前勤めていた会社では、効率的なエクセル資料があるにもかかわらず、毎回手書きで報告書を作るという因循姑息な方法が取られていました。

上司が「手書きでなければならない」と考えていたため、新しい方法を導入できなかったのです。こうした「因循姑息」な状況を変えるのはなかなか難しいものです。

「姑息」の使い方を例文で紹介

ここでは、日常生活やビジネスシーンで「姑息」を使う場面をいくつか紹介します。

  1. 宿題が間に合わなかったため、解答欄をそのまま写して提出した。これでは姑息な手段で一時しのぎに過ぎない。
  2. 急な来客に備え、散らかった部屋のものをクローゼットに押し込んだが、これも姑息な手段でしかなかった。

このように、姑息とは「その場限りの対策」や「一時的な解決方法」を指す場合に使います。ただし、一時的にやり過ごす方法として使われることが多いため、後で後悔や二度手間になることが多いのも特徴です。

思いつきで一時しのぎをしたけれど、結局は根本的な解決策が必要になることがよくあります。

医療用語での「姑息的治療」

医療の現場では、「姑息的治療」という表現が使われることがあります。これは「完治を目指す治療」ではなく、患者の負担を減らすために一時的に症状を緩和するための治療法です。たとえば、癌患者の痛みを軽減するために行われる処置や、すぐに根治手術ができない場合に行われる一時的な治療法が「姑息的治療」に該当します。

医療の分野では、一時的に症状を和らげる目的で行われる治療として「姑息」が使われています。

「姑息な人」とは?

「姑息な人」とは、その場しのぎばかりを考えて行動する人のことを指します。たとえば、計画的にお金を使わず、目の前の問題を先送りにしてしまう人や、仕事において根本的な解決をせずに小手先の対策でごまかす人も「姑息な人」と言えるでしょう。

このように、一時しのぎを優先して後で問題が増えるような行動を取る場合に「姑息な人」と言われます。

なぜ「姑息」が「卑怯・ずるい」と誤解されているのか

「姑息」には「その場しのぎ」という意味があるため、「ごまかす」「いい加減な方法」と連想され、そこから「卑怯」や「ずるい」といった意味で使われるようになりました。

実際、「姑息な手段」と言われると、良くない手段を使ったように感じられるため、ネガティブな印象が強くなっています。しかし、本来は単に「一時的にやり過ごす」という意味に過ぎません。

文化庁の調査でわかった誤解

文化庁が行った「国語に関する世論調査」(平成22年)によると、「姑息な手段」を「一時しのぎ」という正しい意味で理解している人はわずか15.0%でした。

一方、「卑怯な手段」と間違った意味で使っていた人が70.09%にも達していました。この調査結果からもわかるように、「姑息」を正しく理解している人は少なく、多くの人が「卑怯」や「ずるい」と誤解しています。

したがって、普段「一時しのぎ」という意味で「姑息」を使っても、相手には違う意味で伝わってしまう可能性が高いため、注意が必要です。

「姑息」を正しく使いこなそう

「姑息」という言葉には「間に合わせ」「その場しのぎ」「一時しのぎ」といった意味があります。ネガティブなニュアンスを持っているわけではなく、状況に応じて適切に使えば、誤解を生むこともありません。以下のポイントを押さえて、正しい使い方を身につけましょう。

  1. 「姑息」の本来の意味を知る:「その場しのぎ」「一時的な解決」を意味し、決して「卑怯」「ずるい」ではない。
  2. 「姑息な手段」は一時しのぎの解決方法:根本的な解決策ではなく、後々対策が必要になることが多い場面で使います。
  3. 相手に誤解を与えないように注意する:「姑息」を「一時的な処置」という意味で使っても、相手が「卑怯」と解釈するかもしれないので文脈に注意すること。

まとめ

「姑息」という言葉は「一時しのぎ」や「その場しのぎ」の意味を持ち、根本的な問題解決ではなく、とりあえずの対応を指します。

誤解されがちなため注意が必要ですが、正しい意味を知れば、日常生活でも使いやすくなります。

  1. 「姑息」は「一時しのぎ」の意味であり、「卑怯・ずるい」ではない
  2. 医療用語の「姑息的治療」など一時的な処置として使われる
  3. 70%以上の人が誤解しているため、誤解されないよう注意

この機会に「姑息」の意味を正しく覚え、周囲の人にもその場しのぎの一時的な処置という意味であることを知ってもらいましょう。

タイトルとURLをコピーしました